変形性股関節症の鍼(針)治療・整体治療

変形性股関節症とは

 変形性股関節症とは、臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)、先天性股関節脱臼の他、遺伝、加齢、体重、性別など複数の要因で軟骨の欠損により生じた関節症状や兆候のある疾患群と定義されます。

 変形性股関節症は前股関節症〜初期股関節症〜進行股関節症〜末期股関節症という具合に進行し、2年で軟骨がすり減ってしまうとも言われます。

変形性股関節症の症状

初期症状
  • 長く歩いた後の股関節周辺の違和感、疲労感
  • 歩き始め、座位から立位への動作での痛み
  • 階段昇降時の痛み

中期症状

  • 可動域が制限され始め、しゃがみにくくなる
  • 歩行時、階段昇降時の痛み増大
末期症状
  • 歩行困難
  • 可動域の制限の増大
  • 夜間痛

 概ね上記のような症状がみられますが、レントゲン検査での所見とご本人の感じる痛みには相関関係がありません(骨の変形具合と痛みは別である)。 初期の股関節症の方が痛みの程度が1〜2である一方で、末期の股関節症の方が必ずしも痛みの程度10になるわけではありません。末期の股関節症と診断されていても、痛みをほとんど感じない方もいらっしゃいますし、初期の段階でも強い痛みを訴える方もいらっしゃいます。

 現在、変形性股関節症治療で当院に通われている患者さんの最長は25年になり、初診時から関節可動域もほとんど変化なく、20分程歩いて来院されてます。

 ですから、変形性股関節症という名前にとらわれず、今ある「痛み」をどうするか?を考えていくと良いと思います。

 当院では、変形性股関節症の痛みは骨の変形そのものによるものではなく、股関節周囲の筋肉など軟部組織の問題が主な原因であると考えて治療しております。

 グロインペイン症候群(鼠蹊部痛症候群)とは発生機序は異なりますが、治療のアプローチは同様です。

股関節の痛み(鼠蹊部・臀部・太ももの痛み)の原因は

 筋肉が原因

  • 大腿四頭筋
  • 中殿筋
  • 小殿筋
  • 恥骨筋
  • 長内転筋
  • 腸腰筋

神経痛が原因

その他の原因

  • FAI (大腿骨寛骨臼インピジメント)
  • 股関節唇損傷
  • 特発性大腿骨頭壊死症

筋肉とトリガーポイントとの関係

 変形性股関節症の患者さんが訴える「痛み」の部位には、鼠径部、腰部、殿部、大腿の前面・側面・後面、さらには下腿前面などがあり、これらの痛みには股関節周囲の筋肉に生じたトリガーポイントが関与していることが多々あります。

 簡単にご説明しますと、「★」印で示されたトリガーポイントに異常があると、「黄色」で示されている範囲に痛みなどの症状(関連痛)が現れる、という仕組みになります。

中殿筋のトリガーポントと関連痛の場所

 殿部、大腿後側

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小殿筋のトリガーポンと関連痛の場所

 殿部、大腿後側、大腿側面、下腿側面

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長内転筋のトリガーポンと関連痛の場所

 大腿前面、下腿前面

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股関節の痛み(鼠蹊部・臀部・太ももの痛み)の治療

 股関節周辺の痛みの原因は多岐にわたるため、それぞれの原因を的確に見極めた上で治療を行うことが重要です。原因が筋肉内にできたトリガーポイントである場合、鍼治療は非常に効果的です。これらのトリガーポイントを丁寧に探し出して治療し、取り除いていくことで、痛みは大きく改善されます。

 さらに、股関節に関連する腰神経への刺鍼や、腹部の緊張を緩めるための刺鍼も併用して行います。

 整体治療では関係する腰椎の調整と、股関節の関節モビライゼーションを合わせ、筋肉トレーニングも段階的に指示していきます。

 治療効果は週に1〜2回の鍼・整体治療で、治療開始から3〜6ヶ月の期間に8割ほど改善され、それ以後は大きな変化は見られない…というイメージです。

 これは3〜6ヶ月で軟部組織の問題はほぼ改善され、鍼、整体治療の効果が無い部分による痛みが残っていると考えられます。この経過は変形性膝関節症もよく似ています。

 そこからは治療期間をあけながら、現状を維持していけるように治療を続けていきます。痛くなってから治療するのではなく、定期的に治療して痛みを再発させないようにすることが理想となります。